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伊藤雄二郎のさわやか系心理学


26、キャリアフリー・ウーマン・・・働く女性たちへ

 

やわらかい陽射しに包まれて

凛と立つ

キャリアフリーの女

内側から開かれ

流れを生み出す

 

最初に彼女に会ったのは、ビジネスマン支援の

ツールを提供しているBOAという

オフィス主催の講座である。

この日のテーマは、

イメージングの手法のビジネスフィールドでの活用であった。

 

受講生として参加していた彼女の

表情や物腰からは、

長年ビジネスフィールドの最前線で鍛えられてきた

女性に特有の雰囲気が漂っていた。

年の頃は30代後半から40代前半。

長年のキャリアを経る過程で身につけた

ものやわらかな雰囲気は、彼女を大人の女性に見せ

同時に彼女の「素」を品よく覆っていた。

 

仕事人としての彼女のコアに何があるのか、

多人数相手の講座の中で接している限りは見えてこない面もある。

だがその講座から数日後、

彼女からパーソナル・セッションを依頼する

メールを受け取った。

私は、彼女の素の声に耳を傾ける機会を得たわけである。

 

女性にとっての仕事

女性にとっての仕事って何だろう?

仕事に真剣に取り組んでいる女性で

このことを考えたことのなかった

人はいないのではなかろうか?

この日の彼女の語る言葉のひとつひとつにも

この大いなる「?」マークがにじみ出ていた。

彼女は仕事を通して様々な経験を積み

成長して行きたいという強い思いを携えていた。

もしかして今の仕事が本当にやりたいこととは

別かもしれないと感じながらも

まずは自分の学びの場として

キャリアをスタートさせた。    

 

そう思いながらも彼女は、いざ仕事となると

全力を投入してしまうタイプのようであった。  

そういう人がある程度の年月

組織の中で仕事に取り組んでいると、

彼女にしか出来ない仕事が発生し

周りからも頼られるようになってきてしまうものである。

 

とりわけ、彼女の場合、

企業や、政財界の人々と直に関係する

立場であるだけに

仕事に向かうモチベーションも

緊張度も高めに設定されているようである。

その一方、政財界の動向に

敏感にならざるを得ないポジションに

ストレスを感じることも

多いようである。

 

理想型の見えないキャリアウーマンたち

そして・・・。

ある程度の年月ひとつの組織で勤めてきた女性が

ある程度の感度を備えていると見えてきてしまうものもある。

それまで憧れていた、

輝いて仕事をしているように

見えていた人たちの陰の苦しみ。

世の中のカラクリ。

その先に何があるのか、考え始めると

今後の自分の仕事とのつきあい方の

理想型が見えてこない。

 

傍から見れば、

恵まれたポジションを与えられているはずなのに、

「女にとって仕事って何?」の

「?」マークは巨大化する一方である。

贅沢な悩みと言われてしまえば

それまでだが、

出口のないもやもや感を抱えながら

仕事を続けるのは

相当の精神的なスタミナを要するものである。

 

「みんな違ってみんないい」

かつて天才詩人と言われた

金子みすずの言葉である。

その言葉に助けられ

自分に「イエス」と言えるようになった人も

大勢いたはずである

だが現代という時代の難しさは

自分がどうあれば「いい」のかが

イメージしづらいことにある。

 

働く女性たちがある時期になると感じるようになる

「本当にこれでいいのかな?」

という思い。

その大文字の「?」マークを解毒するためには

「みんな違ってみんないい」の先が必要なのだ。

どうすれば

自分に対して心から

「イエス」と言えるのか?

さらにその自分が状況を

具体的にどう変えていけるのか?

 

そんな彼女たちが求めているのは、

自分に「イエス」と言える自分自身の

明確なヴィジョンと、

そのヴィジョンを具現化した言葉。

短くても心に響く言葉である。

 

それが手に入れられて

初めて金子みすずの言うことも

実感できるようになる。

そんな人たちが今の時代には増えている。

 

実感に結びついた言葉

この日、私はそんなキャリアウーマンの一人である

彼女へのインタビューからセッションを開始した。

彼女が本当に仕事に求めているのは何なのか?   

それを明らかにするために。

 

心と魂(知性や感情を含みつつ越えた、
より本質的な生命感覚のようなものという意味のようです。
宗教的なニュアンスは含んでいないようです)

と行動が調和したフィット感のようなもの。   

それがインタビューの最初に出てきたキーフレーズであった。

 

私はBOAの主催の講座の中でも

「自分の実感と結びついた言葉を使うように」

と何度も繰り返したが、

この日の彼女にも実感に結びついた言葉で

話すことを要求した。

 

なぜ、そのような作業が必要なのか?

ひとつには実感に結びつかない言葉が世間にあふれているためである。

 

浮遊する言葉たち

例えば彼女のような働く女性にありがちな悩みに対しては、

具体的な内容と結びつかない

口当たりのよい言葉が用意されているのが

現代という時代である。

彼女のような女性の悩みは

最近よく言われている

「ライフとワークのバランス」      

という言葉で表せる。

「あなたの悩みは、ライフとワークのバランスを    

取ることで解決できるわね」

 

口当たりのよい、しかし中身のない言葉。

もちろん、具体的なコンテンツは

実際に悩みを抱える個人が行動を通して

埋めていくしかないのだが、

誰もその方法は教えてくれない。

具体的なコンテンツを埋めるためには、

彼女自身の実感に結びついた

彼女に固有な感覚を表す言葉を

なんとか見つけ出すしかないのである。

そのことは現代という時代において

いくら繰り返しても足りないくらい重要である。

 

バランスと受容

インタビューを進める中で

彼女の仕事との関係での

理想的な立ち位置を表す

キーワードが浮上してきた。

それは「バランスと受容」である。

 

一見ありきたりのフレーズだが、

これは彼女にとってはきわめて重要な意味を持つ

言葉であった。

 

ビジネス社会における

競争力や生産性や成果を基軸にした

価値観。

そうした中で今までの自分の価値意識でやり続けて

いくことに限界を感じながらも、

あっさりとこれまでの価値意識を手放すこともできずに悩んでいた。

 

その一方で彼女は心理学や身体技法も熱心に

研究しているマニアックな一面もあった。

心理系では、ゲシュタルトセラピーを学び、フォーカシングにも関心を抱いている。

身体技法系では、呼吸法をかなり熱心にやっていたようである。

そういう世界はまたビジネス社会とは違う価値観が

見つけられるようにも思える。

しかしそういう方面の事に夢中になる人の中には

現実逃避的でバランス感覚の欠如したタイプの人も

けっこういるようである。

彼女自身、呼吸法を学んでいた団体の

カルト的な雰囲気には引いてしまうものを感じたようである。

長年ビジネス社会で歩んできた彼女がそうした

狭い世界の中でしか通用しないような価値観にも満足できるわけもなかった。

そういう意味でも彼女には「バランス」という

キーワードは大切なようである。

自分が本当に大切にしたいものは何か?

そう問い続けた彼女が、

自分の中に湧き起こる二極の思いに

折り合いをつけるためのキーフレーズが

「バランスと受容」であったのだ。

一見マイナスと思える自分の特性を否定的に捉えるのではなく、

活かしきるような気持ちで受け入れる姿勢を表しているのが

このキーフレーズであった。

さらに「バランスと受容」という資質を体現している未来の彼女の

イメージを辿っていくと、周囲のノイズに惑わされず、

優劣、損得、好き嫌いを越えて 自分のすべき仕事に

全面的に自らを捧げられる人物のイメージが浮かび出てきた。

彼女は二極を統合した新しい自分のイメージは、

「太陽」のシンボルで表されるという。

もちろん太陽にもいろいろな表情がある。

彼女の思い描いた太陽は、ギラギラした

真夏の太陽ではなく、

やわらかな陽射しを惜しみなく

地上に分け与える慈悲深い太陽のイメージだった。

それがわかると

「バランスと受容」を仕事の中で具現化するのを

サポートするヒーリング・センテンスがその場で自然に浮上してきた。

 

「やわらかい、陽射しに包まれて

 凛と立つ、

 キャリアフリーの女

 内側から開かれて 

 流れを生み出す」

 

「ジグソーパズルのピースがはまっていくようでごちゃごちゃしたものがすっきりした。

ピースがひとつはまり始めたらどんどん形ができあがっていくような嬉しさを感じる」

センテンスを読んでの彼女のリアクションである。

彼女にとって、このセンテンスで表されている

感覚は、既存の枠組みの中には見つけられなかったものだった。

その意味でこのセンテンスは彼女にとって「未知の感覚の貯蔵庫」といえる。

 

今、30代から40代にかけての働く女性の苦しさは

それまでの既存のビジネスフィールドにはなかった

仕事に対する新しい立ち位置を、

自らクリエイトしていかなければ

ならないことと関連している。

 

このセンテンスをかみしめる過程で

彼女が見つけたのは、

「自分が感じている気持ちに責任を持つこと」だった。

言い換えるなら

どんな小さな感覚でも、

自分が感じている感覚をないがしろにしないという

ことである。

そこから彼女自身が原点となり、

新しい流れを生み出す力が生まれてくることを彼女は実感していた。

 

それが既存の流れに流されて生きていくことの

何倍ものエネルギーを要する作業であることは

いうまでもない。

だがこの日、新しい立ち位置を明確につかんだ

彼女の全身からは、新しい流れを生み出そうとする

意志を備えた人だけが放つ、

フレッシュな空気があふれていた。


キャリアフリーという言葉

ちなみにバリアフリーなら聞いたことがあるが

キャリアフリーなんて聞いたこともないという方。

これは、彼女の話を聞きながら、

私がその場で思いついた造語である。

IT系の文脈ではキャリアフリー

という言葉があるようだが、

この場合は携帯電話会社(キャリア)を

変えてもメルアドは変わらないキャリアフリーの

システムというように用いられるもので、

この場合のキャリアフリーとはまったく

意味が異なる。


働く女性たちへ 

ここで言うキャリアフリーとは、

損得、勝ち負け、優劣、能力の有無。

伝統的なビジネス社会に浸透する

価値観を十分に理解し、

その中で能力を発揮しつつも

なおかつそうした枠組みにとらわれない

自由度の高いまなざしを備えた

キャリアウーマンを表す造語である。

 

かつてキャリアウーマンという言葉が

誕生し、

仕事に打ち込む女性のイメージが

市場に溢れた時代があった。

だが、メディアによって作られた華やかなイメージ

とは異なり、現実の彼女たちは、

日々直面する様々な壁を乗り越えつつ

障害物競走に挑むような気分で

仕事に取り組んでいることも多い。

 

冒頭に掲げたセンテンスが

彼女とテーマを共有する人たちに

何らかのインスピレーションを

もたらすことを願って。

 

                  (2007年8月20日)

 

以下は数日後彼女から受け取ったメールの一節である。(当人の了承を得て転載)

働く女性は男性以上に価値観も
多様化していると思います。

キャリアフリーという言葉に救われて、そこから、
自分自身の深いところとマッチングし、イメージを膨らませていく・・・
海深く泳ぎ、広がる世界を呼び覚ます・・・  
そんな心境です。




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