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伊藤雄二郎のさわやか系心理学


24、空を見ていた少女〜頑張りすぎる女性たちへ

広い空を見上げていた
色に命が宿る、
世界が動く

だれもいない水族館
透明な魚
大海の夢を見て眠る

依頼

知り合いの女性から自分にも
センテンスを作ってほしいと頼まれていた。

彼女は19歳で女児を出産し、21歳の今は
大学に行きながら子供を育てているガッツ溢れる女性である。

主婦と母親と学生をこなしながら働くことがいかに大変なことか。
彼女を身近で見ていて知っている私は、彼女の申し出をすんなり受け入れた。

以前彼女には、プロコーチたちのグループのメンバー用に作成した
10種類ほどのセンテンスを見せたことがある。
そのとき、彼女が反応していたのは、
男性のプロコーチに贈った「自分らしくいられることをサポートするセンテンス」であった。

そのセンテンスを読んだ彼女は、「センテンスは、自分が気づいていない領域に入ってきて
いろんなことを気づかせてくれるからスゴイ」と言っていたことがある。
おそらく彼女は、私がセンテンスを贈ったプロコーチの男性と共有しているテーマがあるのだろう。

拒絶

しかし・・・。彼女のいないところで、
私一人で何度か彼女のためのセンテンスを作ろうと
トライしてみたがどうもうまくいかない。
お互いに気心が知れているような関係の場合、
離れていてもある程度の精度の高さを備えた
センテンスを作ることはさほど難しいことではない。

だが、彼女の場合どうも少し様子が違っていた。
彼女自身の手で書いてもらった彼女の署名を眺めながら
意識を集中しようとするのだが、
感覚の触手が何かに阻まれたようで、どうもイメージが像を結ばないのだ。

何だろう?

センテンスを作る場合、日常的な意識より少しだけ深まった意識に入り、
(専門的にはこれを変性意識といいます)作り手の感覚を
センテンスを贈る相手の意識に合わせてチューニングする必要がある。
そのとき、日常的に接している範囲では感じ取ることのない反応をキャッチすることもある。

その時私がキャッチしたのは、日頃彼女と仕事のレベルで
接している中では感じることのない何かだった。

そのような事態に遭遇したからといって、
精度の高いセンテンスをスムースに作ることが出来ないという程度の
ことしか生じないので、取り立ててどうということはないのだが、
私はこの時、自分が彼女のことをよく知っているという認識が
あやまりであった事は認めざるを得なかった。

何だろう?この霧がかかったような感触は?


日頃、てきぱきと仕事をこなす彼女しか見ていない
私がまったく気づいていない何かがそこには感じられた。


ボツ

それでもなんとか彼女と共鳴する色を見つけだし、
その色を基調にしたセンテンスを作って彼女に持っていった。

その色とはディープマゼンダ。濃いめの赤紫色である。

だが、彼女はディープマゼンダという色をよく知らなかった。
彼女のことをよく知る知人から、彼女の存在を色にたとえると紫色だと
告げられたことはあったらしいが、
彼女はそのたとえもすんなりとは受け止められなかったようである。

結局、ディープマゼンダを基調にしたセンテンスは
彼女にはピンと来なかったようなので、
そのセンテンスはボツにして新しいセンテンスを作ることにした。

インタビュー

どうやら彼女の場合、当人にインタビューしながら作っていかないと
お互いが納得出来るレベルの精度の高いセンテンスが出来そうにない。

そんなわけでインタビューのための時間を取ったのだが、その過程もかなり難航した。

センテンスを作る場合、そのセンテンスがどういう目的で作られたのかという
ニーズを明確にする必要がある。
彼女の場合、このニーズ自体がインタビューを続ける間に何度か切り替わった。
最初が、「自分を好きになるのをサポートするセンテンス」

次が「視野が広がる感覚を与えてくれるセンテンス」
結局「今よりもっと自分を受け入れられるようになることをサポートしてくれるセンテンス」
というニーズにフォーカスすることにした。

感覚麻痺

彼女は、大学では心理学を専攻している、知的水準の高い女性である。
インタビューの途中、彼女は自分が痛い現実に対して
感覚を麻痺させることで対応しようとしてきたことを打ち明けてくれた。
家族関係などで生じる葛藤に対し「感じる」よりも「考える」ことで対応する癖が身についているという。
表面的に接しているだけでは、なかなかわからないが、彼女は見た感じよりはずっと大変な状態にあるようだった。

頑張りすぎる20代の女性たち

今の20代、30代の女性たちの中には、どんなにしんどい時にも
「辛い」とも「大変」とも言わないで頑張ってしまう人が結構いるようである。
個人的にはこういう人たちは応援したいが、ガッツのある頑張りやさんタイプが、
自分の心と身体が悲鳴をあげているのにも気づかないほど
頑張っているのを見るのは辛いものがある。
そんな彼女たちがセンテンスを受け取ることで多少なりとも重荷を下ろしてくれたらいい。

 

生みの苦しみ

インタビューを通してセンテンスを作成する場合、
その過程で多少苦しい思いをすることがあることもお断りしておく必要はある。
自分のリアルな感覚を丁寧に辿るように感じることは、往々にして苦しみを伴う作業なのだ。

とりわけ、今回の彼女のように適当なところでごまかさない、
妥協を嫌うタイプにとっては、なおさらである。
私が最初に持って行ったセンテンスを、すんなり受け取っていれば
もっと楽だったはずだが、今回彼女は妥協せずあえてハードな道を選んだわけである。
やはり彼女にはガッツがある。

インタビューの途中彼女は、感覚を働かせるべきところで思考を働かせ、
意識を核心から逸らせることが何度かあった。
そこに感じたくない何かがあるのだろう。
ヒーリング・センテンスのいいところは、そのような場合、
感じたくない核心部分を無理に感じなくても、
周辺部分の情報から脇を固めるようにセンテンスを作ることが出来るという点である。

ちなみに彼女は、生まれ変わることが出来たら
魚に生まれ変わりたいと思っていると打ち明けてくれたが、
これも私などには理解出来ない感覚である。
作り手にとって理解できない感覚に基づくキーワードでも
切り捨てることなくセンテンスに織り込むことは大切である。
そんな風にして生まれたセンテンスには、
私にとっては理解するのが難しい世界が描かれていた。
とはいえ読むとなにやら底力が湧いてくるような感じがするものだった。

そのセンテンスを読んで最初に彼女が口にした言葉は

「自分が居たんだと感じられる」であった。

もしかして彼女は自分がそんな言葉を口にしたことを忘れているかもしれない。
その後少し落ち着いてから、彼女はセンテンスを読むと
「いい感じで脈がゆっくりになる」とコメントしてくれた。

その言葉を聞いて、私はセンテンスが一応完成したと判断した。

90分の間意識を集中させ私と一緒に生みの苦しみを味わった彼女は、
それに見合うだけのものを手に入れられただろうか?

彼女からのメール

翌日彼女から次のようなメールを受け取った。

広い空を見ていた
色が宿る生命が宿る
世界が動く

だれもいない水族館
透明な魚
大海の夢を見て眠る

・・・・・・・・・・・・・
※ちょっと直しちゃいました

上の3行によって、隠していた自分の居場所をつきとめ、

下の3行でわたしの本質を見せられたという感じがしました。
忘れていた(忘れさせていた?)自分の深いところに降りていくための入口を見つけたというイメージです。
そして、中にはどんな自分がいるのか教えてもらったような…
自由を諦めていなかった過去のわたしを思い出されました。

うーん、あんまりまとまっていなくてすいません!><

私は一人でセンテンスを作るだけでなく、共同作業のように、
ひとつのセンテンスを誰かと一緒に織り上げていく作業も好きである。
その間はお互いに生みの苦しみを味わうため、
ある程度の精神的なスタミナを要するが
センテンスが生まれ互いの間にすーっと風が通るような空間が生まれるときの
気分は何者にも代え難い。

自分のオリジナルのセンテンスを作ることは
自分に対して詩を手向けることであり、
他人とは交換不可能な自分の本質と向き合うことである。

センテンスの作り手と受け手は、
詩的であることを通してお互いの私的な領域に足を踏み入れることになる。

その意味でセンテンスの作成はきわめてプライベートなものなのだが、
こうして作られたセンテンスは、同じテーマを共有する人にとっては助けになることもある。

今回、センテンスの受け手である彼女とテーマを共有する人々のために、
当人の許可を得た上で彼女のために生まれたセンテンスを公開したい。
理知的で頑張りやで根性のある女性たち。
特に生まれ変われるものなら魚に生まれ変わりたいと願ってる人が
(そんな人が彼女の他にいればの話だが)
自らを受け入れる過程をこのセンテンスは助けてくれるはずである。

広い空を見ていた
色が宿る生命が宿る
世界が動く

だれもいない水族館
透明な魚
大海の夢を見て眠る

                                (2007年8月6日)

 

 

だが実はストーリーはまだまだこれで終わりではなかった。

続きは次号で。






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