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伊藤雄二郎のさわやか系心理学

25、空を見ていた少女〜頑張り過ぎる女性たちへ パート2 

青い空が溶ける
生命が叫ぶ
世界がうまれる

だれもいない水族館
透明な魚
大海の夢を見て眠る

センテンスに生命が宿るとき
彼女にセンテンスを渡した日の3日後、
新しいセンテンスがメールで送られてきた。
それは彼女自身が現在の自分の心境に合わせて
オリジナルのセンテンスを書き替えたものだった。

「爆発してるなぁ」
最初にこのセンテンスを見た時の私のリアクション。

センテンスというのは本当に生き物のようなもので、
贈られた相手にセンテンスの響きが伝わって
新しいリアリティーが生まれると
センテンスそのものが
新たなリアリティーと共鳴して
どんどん変化していくものなのだ。

彼女の言葉を借りると
彼女はこの時
「もう一人の私」の正体に気づいたのだという。

紅雫(こーた)という名の少女
彼女はインタビューの間も何度か
「もう一人の私がいるような気がする」と

口にしていたが、私はその件については
深く切り込まなかった。
彼女もその時点ではそこに触れるのは
辛そうだったし、何よりその時の
私の仕事は彼女のニーズに沿った
センテンスを作ることであり
古典的なカウンセリングやセラピーを行う
ことではなかったからだ。

彼女の説明によると
彼女は中学1年生くらいから
バンド活動をしており
その際「紅雫(こーた)」という
ニックネームを使用していたという。
音楽活動やライブ会場で知り合った

彼女の仲間たちの中には
彼女の本名を知らず「紅雫」という
名前しか知らない子も結構いたという。

彼女が本名のままの自分でいるのがつらくなると
決まって「紅雫」が現れて、
音楽活動に熱中したり、小説を書いたり、
時には家を飛び出したり、叫んで苦しみを吐き出したという。
彼女がいわゆる「不良娘」をしていた時代に
「紅雫」の存在が彼女が周囲の人たちとの距離を
上手に取るのを助けてくれたという。
それでも何度も生命の際(キワ)
まで行ったという少女時代の彼女。

そんな彼女にとって紅雫というのは、
少女特有の空想力でひねり出した想像上の存在などではなかった。
それは生々しい情動を備えた実在する少女に
与えられた名前だったのだ。

少しだけ、彼女からもらった
メールを引用させてもらおう。

さくら&紅雫

中学〜大学1年生ぐらいまでは
「紅雫」がわたしのほとんどを占めていました。
しかし,結婚・出産を経験し,「紅雫」は眠りにつくようになりました。
両親に接近するには「さくら(彼女の本名の仮名)」じゃないと無理ですし,

あくまでも家庭を築くのは「さくら」でしたから。
それからは,時折感情を表出する際に

「紅雫」は,あくまでもこっそりとわたしの外に出ていたのかもしれません。
今となっては「紅雫」が経験してきた多くのことは,

わたしの記憶から抹消されてしまっています。
というか,本当にすっぽり抜け落ちているのです。
大体どんなことをしていたのかは覚えているのですが,

具体的には何も思い出せない。
「紅雫」はわたしの感情の核であり,もう一人のわたしです。
主人も「紅雫」の存在に気づいていたようで,

「生理的に合わない」,「嫌いだ」と
言っていました(笑)。
たぶん,主人の出逢った「紅雫」は

普段のわたしと比較して,「情動の塊」のような
ものだったからだと思います。
感覚を上手に使っていたのも「紅雫」の方だと思います。
「紅雫」は歌や,詩などの言葉で自分の感情や想いを表出していましたし。

だから,わたしはヒーリング・センテンスに

“「さくら」と「紅雫」の融合”を望んでいます。
今のわたしが「紅雫」と融合することによって,

嫌な記憶を思い出してしまうかもしれませんが,
それでも構わないと思うほどに「紅雫」が愛おしいし,
帰ってきて欲しいです。
なんだかおかしな話になってしまいましたが・・・。
これがわたしの感じた全てです。
それを踏まえて,大幅に訂正を加えたセンテンスを送らせて頂きます。

 

本名との希薄なつながり
このようなメールと共に送られてきたのが、
冒頭に掲げたセンテンスである。

紅雫のエピソードに加え、彼女は家庭の事情で
結婚の前にも一度苗字が変わっているということを教えてくれた。
20歳そこそこで、苗字が二度も変わる経験をする
ということがいかなるものなのか。
幼少期から成人するまで、
比較的安定した環境で過ごした私には想像が難しかった。
彼女に書いてもらった署名を見ても
イメージが像を結ばなかったあの奇妙な感覚・・・。
彼女が現在の自分の名前と希薄な
結びつきしか感じていない理由を知った今では
そのこともすんなり納得できた。

「紅雫」に共鳴する色は言うまでもなく
「真紅」である。
彼女が大切に守り育てていた「紅雫」とは
まさに窒息しかけていた彼女の情動そのものだった。

センテンスの共鳴度
最初に「空を見ていた少女」をサイトにアップした

直後、私は別な知人から次のようなメールを受け取っていた。

突然 HP気になって覗きました!

 

広い空を見上げていた

色に命が宿る、
世界が動く

だれもいない水族館
透明な魚
大海の夢を見て眠る

 

 

ハートに響きました。

涙がこぼれます。

 

何かをもらいました(^_^)v

 

ゆるやかに響いてくる言葉たちです。

静かな涙がこぼれます。

 

魂が・・

頷いています。

 

 

ありがとうございました!

 

            マヤ

 

このメールを送ってくれた当人の
許可をもらい私は
センテンスが生まれるきっかけとなった
当の女性にメールを転送した。
そのメールを読んだ
彼女は以下のようなメールを返信してくれた。


ほわぁ,これがセンテンスの力なんですね・・・。
凄まじい影響力をもっているというか。
なんだろう,センテンスって生命力の塊なのかもしれませんね^^
わたしも,そのマヤさんという方と同じ空間を共有し,友人になれたような気がして嬉しいです☆(笑)

センテンスの共鳴度
自分にとって感じるのが
難しい現実を感じ取ることによって
綴られるセンテンスは、
生まれるまでの過程で
生みの苦しみがつきまとうが、
その分同じテーマを
共有する人たちへの
共鳴度も高い。

おかげで私は互いの名前も知らない
彼女たち二人のために何度もメールを転送する
運び屋の役を引き受けることになった。

少年の日の後悔
何度かのメールのやりとりの後
彼女たちは、ヒーリング・センテンスの
コミュニティをネット上に作ることを提案してくれた。
いつの世にも情動の力を味方につけた女たちは強い。
彼女たちの力強さに圧倒されそうになりながら、
私は男にありがちなためらいにとらわれていた。

女性から少女時代の痛いエピソードを
聞かされると決まって覚える疼き。
少女たちの痛みにうすうす気がついていても
自分のことで精一杯の少年には
彼女たちの痛みを受け止めることなど出来はしなかった。
もしかして加害者だったかもしれない
自分の中の少年が感じる後悔?
あの時何も出来なかった少年はもう大人になった?
大人の僕は少女のアナタにとって失礼な存在じゃない?
そんな具合に私の手は止まる。

この日もそうだった。
紅雫に関する原稿をどうしても書き出せずにいた。
ネットカフェにこもり
『ペーパームーン』と『デット・オア・アライブ』(どういう組み合わせ?)
のDVDを鑑賞した。これを現実逃避と言うなかれ。
原稿を書くためのエネルギーを受け取っているのだ、
と自分を納得させてはみたものの、
やはり原稿を書き出す気にならない私は

仕方なく自分自身にセンテンスを贈ることにした。

「紅雫にまつわるテキストを書き始める集中力を得る必要がある」
というニーズに適合的なセンテンス。
ものぐさで暑いのが苦手な私が暑さも忘れ原稿を書くことができたのは、
このセンテンスのおかげである。
もちろんこのセンテンスは、
原稿を書き始めるという
実際的な目的のために作られたものであり、
断じて詩などという代物ではない。念のため。


怖がらないで

そのままのワタシを見ることを

アナタの理知のメスで

ワタシを切り刻まないで

感じて ワタシのことを

ワタシを感じることは、

アナタにとって罪じゃない

ワタシを感じても

彼らはアナタのことを切り刻みやしないから

もう、安心してアタシを感じて

アナタが感じてくれれば

ワタシは存在することを許されるから

 

紅雫

長い間呼吸することを

止められていた実在の少女の名前。

                         (2007、8月10日)




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